電気自動車と暖房問題

昨日、勝間和代さんがTwitterで「新しい乗り物導入」と書いていて、もったいぶっていた。

駐車場工事をする、というから予想はついたが、ブログで発表されたのは、電気自動車「リーフ」のリースを契約したというものだった。なんちゃら、という呼び名があるらしいが、モニターのようなものらしい。

この節電の時節に、せっかく実用域まで持っていった電気自動車を腐らさせるわけには、自動車メーカーとしてもいかないのだろう。事情はわかる。大いに社会実験してもらいたい。

で、気になるところがあるのだ。どこかの記事で読んだ記憶があるのだが、電気自動車の暖房機能のレベルでは北米の寒さの厳しい地域では能力が足りない、という内容のものだ。そこは大雪が積もっているような地域だったから、東京では大丈夫なのだろうとは思う。そのような比較をするなら、日本なら北海道でやらなければ駄目だろう。

そもそも、電気自動車は、余分な熱を出す部分がない。電池から、モータを駆動して、走る。多少はモータで熱損失が出るが、真冬に車内を「春の陽気」にするほど排熱しない。

これが化石燃料を使った従来のエンジンの自動車であれば、熱は捨てるほどあった。熱効率が悪かったので、エネルギーの大半が逆にエンジンで熱となって消えていた。その熱を車内に取り込めば暖房になっていたのだ。

効率をあげると快適さが得られなくなる。もちろん、電気自動車でヒーター(走行用電源、または別な電池でエアコンを動かす)を駆動してやれば暖は得られるが走行距離は落ちるし重量が上がることで航続距離が落ちる。美味しくない。

鉄道の世界を振り返れば、効率が一番悪かったのは蒸気機関車だ。ただ、SLの時代は客車の暖房に蒸気暖房を使っていた。一般的にはスチーム暖房と呼ばれるもので、パイプに高温蒸気を通して間接的に室内を温める仕組み。蒸気機関車では走行するためにひっきりなしに蒸気が発生しているので、その一部を走行用ではなく暖房用に使うだけで暖房がまかなえた。

しかし、煙の問題、効率の問題で電気機関車に置き換えが進むと、客車の蒸気暖房に蒸気が送れない、すなわち暖房が使えなくなってしまった。当時は他の暖房方式がなかった。そこで、暖房車という、ボイラーを積んだ小さな車両を別途連結して暖房の供給源としたり、電気機関車の中にボイラーを積んで、そこで重油を燃やして蒸気を発生させて蒸気暖房を使い続けた。

今の常識では考えられない非効率な方式ではあるが、客車と機関車の数の違いと、新しい暖房を考えても蒸気機関車がその客車を牽引して蒸気暖房を使うことを考えればそうするほうがよかったと考えられたようだ。

何が言いたいか、というと、効率が悪い乗り物ほど、効率よく?というか、付加価値として自然に暖房の熱源を供給できるという歴史があったということなのである。蒸気機関車は効率の悪い乗り物の代表格だ。でも、蒸気暖房用の蒸気は何もしなくても供給できた。しかし、電気機関車、電車と進化するごとに、暖房を別途考えなくてはならなくなった。今は、間接的とはいえ、車内で使う電気(架線から集電したもの、電源車から供給されたもの)を変換して、ヒーターを駆動している。

電気自動車も同じ局面に来ていると言える。電気機関車や電車と違うのは、鉄道の場合は、「電化」は、架線を張ることと同義であるから、常に電源と共に走ることであったため、走行用と共に暖房用にもそれこそ無尽蔵に電気を使うことができた。しかし、電気自動車はバッテリーだ。使える電気の量が限られている。暖房に使ったらその分走れなくなる。

鉄道の暖房車の概念で、走行はバッテリーで、暖房は灯油で、などという、「ハイブリッド車?」が極寒地仕様として出てくる未来はあるのだろうか?

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