Kindle Unlimitedが始まった頃対象になっていたので登録して、最近になってやっと上巻を読み終えたのであるが、そのなかに、若い甲板士官の上司像が個人的に素晴らしかったので、書いておく。
引用を少なくするために、その前置きをまとめておくと、戦争が進んで、兵員不足になってくると、通常は徴兵されていなかったような、40前後のような人たちが国民兵と称して武蔵にもやってきた。今は働き盛りと言われるかも知れないが、当時はおっさんでしかないし、訓練期間も短いから、動作も鈍い本当のおっさんである。そして、今で言うイジメ、私的制裁を加えて、お前のような使えない奴は陸上勤務でもしていろと罵り、やがて国民兵はやる気を失い、勤務から真面目さが消えていった。そこで一喝である。
「国民兵は彼らなりに一生懸命やっている。しかし年齢や体力からして、お前たちと違うんだ。ましてや三カ月足らずの海兵団教育しか受けていない。こんな彼らを、お前たちのように訓練を充分に施された若い者たちと一緒に物事をやらせたら、その半分もできないのは当然だと思わないか。古い兵隊から見れば、国民兵の立ち居振る舞いは、なんとも歯痒いかも知れんが、彼らの立場を理解して、お前たちは始動するべきではないのか」
さらに野村少尉は、普段の温厚さとは打って変わった厳しい口調で、言葉を継いだ。
「今後は、国民兵が命ぜられたことを素早くて企画にできないからといって、夜中に起こして極端な制裁を加えてはいけない。もし制裁を行うような者がいたら、今度はその者を呼び出して、俺が制裁するぞ」
野村少尉の訓示はさらに続いた。
「言われたことをやれるのに、やらないような兵隊だったら、それは気合いを入れても仕方がないだろう。お前たち古い兵隊でやれないのは、やれないのではなくやらないのだ。ところが国民兵はやらないのではなくやれないのだ。これからは、たとえ上等兵曹であっても、できることをやらない者は、容赦なく俺が殴る。これまで俺が言った話しを、各人は分隊に帰って、兵員によく伝えておけ。以上だ」
できることをやらない者は指導の対象になってもしかたがない、が、できないからやらないのをそれと同等に指導(叱責)してはいけないだろう、という内容であろうか?
とりあえず、ここまで。
コメント