今から20年ほど前になるだろうか?私が大学に入学した頃の話である。
当時、営団地下鉄(現:東京メトロ)では、地下区間での車両冷房を使っておらず、相互直通区間で、冷房を使ってきても、地下に入る手前で冷房を切って地下に入っていた。
例えば、私の場合、千代田線を利用するのだが、当時、JR東の203系は冷房車。当然、常磐線を走行中は冷房を使って走ってくる。しかし、綾瀬に到着すると冷房を切る。そして、車掌が窓を開けることをお願いするアナウンスをするか、しないか、知っている乗客が先か、というタイミングで皆、窓を開ける。
理由は、冷房装置が出す熱気でトンネル内の温度が上昇してしまうという理由で営団地下鉄が車両の冷房を行っておらず、駅冷房、トンネル冷房を進めていて、その冷気を窓を開けて走行して車内に取り込むという運用をしていたからだ。
車両の冷房装置が熱気を出すというのは、家庭用のエアコン室外機の前に立ったことがある人ならわかるだろう。室内を冷やせばその分、室外機から熱がでる。電車であれば、室外機は屋根上にある。地下鉄であればそのままトンネルの中に放出されるという理屈だ。
当時は、冷房装置だけではなく、制御装置からも熱が出ていた(抵抗制御など)のだからさらに車両からの熱量は大きかった。
今年の節電など甘っちょろい話というか世界というか、そういう世の中だった。
しかし、車両が新しくなるにつれ、制御装置から出る熱が減り、冷房搭載車両が増えてくる(乗り入れ先の地上で非冷房車を走行させると苦情につながるから車両は冷房化する必要が出た)と、さすがに車両の冷房を使う運用に変わってきた。
そして、JR東日本の209系を筆頭に「窓が開かない電車」が増えたこともあり、電車に乗って窓を開けるという習慣はなくなっていった。
そして、かなり前になるが、日テレの欽ちゃんの仮装大賞で子どもが驚くべき仮装をしたのだ。テーマは様々なマナーを紹介するもの。マナー啓発ポスターのようなネタを仮装でやったものだったが、そのなかの一つ、マナー違反として、「地下鉄で窓を開ける」というのが紹介されたのだ!!!
これはカルチャーショックだった。騒音の問題だと思われるが、いつのまにか、地下鉄では窓を開けてはいけない世の中に変わっていたとはその仮装を見るまで気づかなかった。もう、5年以上、10年近くは経つネタではあるが。
東日本大震災以来の節電ムードの中、各鉄道会社は冷房の設定温度を上げているようだ。それ自体は問題ない。しかし、今書いたように、窓を開ける習慣がない、または車両の構造上開けられない、開けるのがマナー違反という風潮になってしまった上に、車両自体、空調装置に頼っているため、昔の車両に比べるとベンチレーション能力が低い。乗ればわかるが、日中空いていてもサウナのような蒸し暑さをどこか感じるのだ。
これから先、夏が本格化すると、今より社内環境が悪化すると思われる。私は通勤ラッシュの時間帯には乗っていないので、ピーク時の環境はもっと酷いと思っている。窓を開けていくことも考えなければいけないのではないだろうか?
と、ここまで書いて、地下鉄はこれでいいと思った。しかし、地上を走る鉄道では別の問題が発生することに気がついた。昔の車両は透明の窓に巻き上げ式のカーテンが付いていた。眩しい時はそれを下ろして日差しを遮っていた。
しかし、最近の車両は「窓を開けないことを前提にしている」のか、カーテンを省略し、「色付ガラス+UVカット」の窓の車両もある。この場合、窓を開けてしまうと日差しを遮る方法がなくなってしまう。手も足も出ない。空調装置が間に合わなくなったらアウトだ。
さて、今年の夏をどう乗り切るのか。
今後の新型車両の設計がどう変わってくるのかが楽しみだ。
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