東京の地下鉄一元化について

猪瀬直樹副知事がいろいろやっている。

その著作「地下鉄は誰のものか」も買って読んだ。

でも、なにか腑に落ちない。肝心の東京の地下鉄の歴史が、戦前の歴史、東京地下鉄道(今の東京メトロではなく早川徳次の会社)と東京高速鉄道(五島慶太の会社)の話だけになってしまっていて物足りなかった。その歴史は他の本でもいくらでも書かれているし、確か、営団地下鉄の正史、銀座線建設に関する書籍にも書かれているはずだ。

私は作家でもある現職の東京副知事が東京の地下鉄についての書籍を書き、しかも歴史を書くのであれば、都営地下鉄成立史を詳細に書いて欲しかった。しかも猪瀬直樹氏はノンフィクションライターだ。この本では都営地下鉄が浅草線の建設を引き受けて都営地下鉄が始まった経緯がほぼ一言で終わっている。営団地下鉄だけでは東京の地下鉄建設が追いつかなくなった、とだけ。その時期の時代背景も何も書かれていない。

念のため書いておくと、営団日比谷線と都営浅草線ほぼ同時期に建設された。営団日比谷線は部分開業から全線開業までほぼ3年というスピード工事だ。戦前の銀座線が2社がかりで10年以上かかっていたのだから破格のスピードだ。これと並行して浅草線の工事をしなければいけなかったのだから当然営団だけでは足りなかったのであろう。

目的、それは東京オリンピックである。現在の浅草線のルートが都電のドル箱系統であり、銀座線のバイパスルートとして両地下鉄を東京オリンピックに合わせて開業させるために突貫工事したのだ。結果として日比谷線は間に合って、浅草線は間に合わなかった。浅草線の工事はオリンピック期間中中断して終了後に残りの工事を行って全通している。

そして、私がTwitterでも絡んでいるのに猪瀬氏に絡んでもらえないもう一つのネタが、営団と東京都の関係である。現在、民営会社に形の上ではなっている(上場していないが)東京メトロの株主は国(政府)と東京都である。営団時代は株式会社ではなかったので「出資」という形と財政投融資で資金調達をしていたが、出資していたのは国鉄と東京都であった。これが現在の株主、政府と東京都という形で継承されている。

今も、昔も、国鉄(政府)と東京都の出資(持株)比率はほぼ1対1である。だから営団地下鉄の資金の約半分を東京都が出していた、と大雑把に考えることができる。そこに東京都が独自に地下鉄を作り始めた。作る金があったのなら、作るだけ作って経営は営団にやらせておけばそもそも二元化しなかったのでは?というのが私の考えなのである。ようは、今で言う上下分離。都営地下鉄をすべて上下分離方式で東京都が建設して営団地下鉄として経営していれば償却期間が長くなったとしても利用者は割高な料金を払わずに済んだのでは?というのが私の意見だ。

そのあたりの経緯を明確にして欲しいのだ。もちろん、今の法律と、東京都交通局が地下鉄事業を始めた昭和30年代は鉄道に関する法律も全く違うので上下分離が出来なかったのかもしれない。今の法律なら第三種鉄道事業者と第二種鉄道事業者になればいいだけだから簡単なのだが。

もちろん、既に二元化してしまっている現状、東京メトロの不動産に投資しまくったり利用者に利益を還元しない経営方針に株主として口出しをしたり、一元化に向けて協議するのも大事な行動だし、その部分について反対したり横槍を入れるつもりは全くない。現状から考えたらそれが利用者のために一番いいことなのだから。

ただ、ノンフィクションライター・猪瀬直樹氏のいろんな作品を読んでいくと、「地下鉄は誰のものか」の東京の地下鉄の歴史の部分だけが妙に、東京都に都合のいい、子供だましに見えてきてしまう。キレがない。戦前、2つの会社で経営されていたものが営団に統合されて一元化された例として例示したかったのかもしれない。でも、東京副知事だったら東京都交通局の資料全部にあたれるはずなのだから、東京の地下鉄が二元化してしまった過程を明らかにする作品を残してもいいのではないか?とも思うのだ。

今のところ、ネットで調べた限りは、Wikipediaの「市営モンロー主義」の項目の「東京都」の節にある記述以上のものは読んだことがない。流れとしては、大阪と違って戦前に地下鉄の経営に乗り出せなかった。戦後は国が他の営団(食糧営団などの戦時中の統合組織)を解体したのに営団地下鉄だけは存続させて東京の地下鉄を経営させた。チャンスを狙っていたら、浅草線の建設タイミングで営団単独では間に合わないようだったので乗り出すことに成功し、その後、答申の6号線(三田線)、10号線(新宿線、12号線(大江戸線)を建設、営業した、と。

結局、東京都交通局は自分とこで東京の地下鉄を全部やりたかったけど、戦前はタイミングと財政難で失敗し、戦後は政府と営団地下鉄の存在によって失敗。無理やり後出しジャンケンして二元化の形で割り込んだ、以上の解釈ができない。知事・副知事が作家である今、そして地下鉄一元化の活動をしている今、東京の地下鉄、特に戦後の二元化に至った歴史を詳細に残して欲しいなぁと思うのであった。

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